会社の社会保険で健康保険料が安くなるケース
一般的には、国民健康保険よりも会社の社会保険の方がコストが高いといわれていますが、様々な要素がからんでくるため、一概にどちらが安いとは言えないものです。
例えば、従業員の立場なら、会社と保険料を折半する形になりますので、国民健康保険よりも安くなるのはほぼ確実です。けれども、会社オーナーの場合、会社負担分も自分の会社から出すことになりますので、社長の個人分だけを見れば安くなるかもしれませんが、実質的には負担増になってしまいます。
会社の社会保険に移行して劇的に安くなるケースでいいますと、年度の途中で一人会社で法人成りをして、社長が自分の給与を大幅に引き下げた場合があります。
例えば、個人事業で経営していて、夏ごろに年収1,500万円を超えてきたとします。このままでは最高税率の年収1,800万円へと達してしまいますので、これ以上の収入を抑えないといけません。
そこで、法人成りして自分の給与を仮に月10万円に設定しますと、それ以降は毎月10万円ずつしか所得が増えていきません。本来、半年で1,500万円なら年間3,000万円レベルの所得になるものが、法人成りすることで1,600万円程度の所得に抑えることが出来ます。
もちろん、自分の給与を下げた分、会社の方で利益が発生しますので、最終的には法人税で支払うことにはなりますが、法人税の方が安いですし、自分の給与も人件費に参入できますので節税につながるわけです。
この場合の健康保険料についてみてみますと、法人の場合は社会保険加入が義務となっていますが、実際には設立当初、売掛金の入金などの関係ですぐには加入できないケースも多いです。
特に、資本金10万円とかで会社を設立した場合、数か月先の入金までは社長の給与どころか、あらゆる経費が未払いになることも多いはずです。強制加入とはいえ、保険料の原資がないものはないのでしょうがありませんので、軌道にのるまでは国民健康保険のままで対応する経営者も多いものです。
このようなケースの場合、社長の月額報酬水準は月10万円ですので、本来は安い保険料ですむはずなのですが、国民健康保険料では前年分の1,600万円程度の所得でかかってきますので、限度額いっぱいの上限でかかってくることになるわけです。
年齢によっても違いますが、おそらく、65万とか75万円とかの上限の健康保険料になるかと思いますので、国民健康保険では月額換算で月5万円程度も支払うはめになってしまいます。
このような場合、会社の方で借入れをしてでも社会保険に加入しますと、協会けんぽの保険料でいえば、月額報酬10万円の場合は月5千円レベルの保険料で済みますので、約10分の1程度まで安くすることができるわけです。
ただ、会社負担分も発生しますし、厚生年金にも加入することになりますので、総合的に判断することが必要にはなりますが、一人会社で法人成りした場合には、時期をみて会社の社会保険へ移行すると健康保険料が劇的に安くなるかもしれません。
この場合は保険料が安くなる極端なケースですが、一般的には、会社オーナーが社会保険に加入すると、従業員などの保険料も自分の会社で折半で負担しなくてはいけなくなりますので、総合的に考えると負担増となることが多いようです。