非正規は努力を怠った自己責任なのか?

食品加工会社の農薬混入事件で、従業員の賃金の安さがニュースで取り上げられていますが、これは立場によって見解が大きく違うようです。

他人に危害を加えるなどもってのほかと批判されている点では全員が一致しています。けれども、非正規で働いている人のなかには賃金の安さに同情している人も多いようです。

一方、正社員で働いている人にとっては、今まで努力をしてこなかったから自己責任だという意見が多いようです。収入が少ないのは自己責任であって、今まで自分のスキルを磨いて、きちんとした職を得る努力を怠ったツケだという意見も多く見受けられます。

けれども、経営者や富裕層の立場からしてみるとまた違った考えになります。

経営側からみると、正社員も派遣も単なる「労働力」にすぎません。
人件費を出す余裕がある場合は正社員を月ぎめの定期契約で使いますが、人件費に余裕がない場合は、その都度の出費ですむ非正規やパートを使うというだけです。

コアな仕事内容にかかる部分については、正規の長期契約の方がコスパがよいというだけで、「単なる労働力」という面では非正規も正社員も何ら変わらないのです。

人件費というのは「費用」の意味ですので、安い費用でコスパの高い労働力を得られれば、正規でも非正規でもどちらでもかまいません。原材料や労働力という部品をできるだけ安く買ってきて商品を作り、それを売って儲けるというだけのことですので、単なる労働力という意味ではみな同じなのです。

どちらも、人件費がきつくなってくればリストラするだけ。

「がんばったから給与をあげてくれ」という労働者ではなく、「もっと安い賃金で、さらに良質な労働力をたくさん提供しますよ、サービス残業いっぱいしますよ」っていう人を求めているわけですので、給与を上げる気なんてサラサラありません。

給与を上げる場合というのは、100億円ぐらいの利益が出てどうせがっぽり税金でとられるわけだし、それなら給与アップに使ってもいいかなというぐらいの軽い気持ちです。

基本的に、その人でなければのその部署が回らないということはほとんどなく、誰でも変えが効く部品にすぎないのです。にもかかわらず、努力や自己責任だなどと正規が非正規をたたいているのは、おかしな印象を受けてしまうわけです。

例えば、正社員が努力したからといって年収1億円を稼げるでしょうか?

時給千円のアルバイトで24時間寝ないで働いても月収100万円すら稼げません。それと同様、月給払いの正社員も年収1億は無理なのです。バイトも派遣も正社員も、時給や日給、月給で人件費の支払う単位の違うというだけで、たいした違いはほとんどありません。

このあたりの仕組みのわかっている経営者側は、正社員で働くのはばからしいとさえ感じているはずです。正社員の場合、仮に売上で10億円をあげても、その何割かがもらえるわけではありません。せいぜい、ボーナスで数百万ぐらいあがるぐらいです。

その利益の大部分は経営者と株主で分け合うのです。

下手をすれば、寝てても遊んでいても、会社を所有する側の人間なら、利益の大部分を獲得することができるわけです。何もせずとも、正社員が一生懸命に働くことによって、年収1億とかのお金を寝てても獲得できるのです。

そこには努力もスキルアップもまったく関係ありません。
どの立場を選択するのかという意思決定が一番重要なのです。

正規社員が定年まで勤めあげても、うさぎ小屋のような小さなマンションのローンを払って終了みたいな人生を送っているのは、努力だスキルアップだ、自己責任だのという考え方をしてるからだと言いたくなってしまうわけです。

けれども、経営者側がこれをいってしまえば、誰も真面目に働かなくなります。労働力のパフォーマンスが落ちてしまいます。いかにして労働力を効率的に活用するかを考えた場合、身を粉にして会社に尽くす人材に育て上げなくてはいけないのです。これに成功した会社がいわゆるブラック企業ということになりますが、うまくやればやるほど経営者の資産が100億、1000億とどんどん増えていくのです。

正社員が非正規をたたき、そして非正規がバイトやフリーターをたたきますが、資産が10億、100億ある経営者からすると、月給16万のフリーターも月給40万の正社員も違いがなく、どうでもよいことなのです。

もし、現在、派遣などの非正規で働いていて正社員からひどい対応を受けているという方がいらっしゃれば、正規といっても、しょせんその程度のものと考えれば気持ちも軽くなります。正社員だ非正規だのととらわれないで働いていれば、今回のような事件で人生を棒に振ってしまうこともなくなるのではないでしょうか。